(美恵から皆さまへ)
新百合ケ丘近辺にお住まいの方々が家族で気楽に聴けるコンサートとして、年に2回、10年間続いた”文化の風コンサート”、今回の20回目が最終回なのだそうです。4~5年前に一度、弾かせていただきましたが、新百合ケ丘の掲示板に貼ってあるチラシを見つけては、今度はどんなプログラムなのかしら?と毎回楽しみにしていました。
1回のコンサートを作るのがどんなに大変なことか、痛いほど身にしみて私たち演奏家は知っています。クラシック音楽普及のために、どれだけのエネルギーと情熱と時間と手間を、かけてくださったかと思うと、お世話くださった方々に感謝でいっぱいです。
最終回に聴いていただく曲はラフマニノフとピアソラのピアノトリオ。両曲とも私は今回初めて弾きます。ラフマニノフは学生時代に作られた曲で、lugubre(悲しい、哀しい)の指示で始まり、最後は葬送行進曲で終わる悲歌。ピアソラはブエノスアイレスの「四季」から冬と春を演奏します。日本と反対の四季の、遠い地に思わず心が飛んでいきます。他にチェロとのデュオでヘンデル=ハルヴォルセンのパッサカリア、ピアノとのデュオでシューベルトの幻想曲を、ピアノのソロやチェロの小品もあります。シューベルトの幻想曲は弾く度に、近づいたと思ったシューベルトが、弾き終わるとまたさらに遠くに行ってしまったと感じる不思議な曲。私には永遠の曲です。10年間の思いの詰まったコンサート、これからも皆様のそばに音楽がありますように。